大変申し訳ございません。
わかったつもりになって色々書いていました。
まともに考え始めたところ、ちゃんと理解出来ていないことがわかりました。
ほんと甘ちゃんでした、すいません。 

 
ネガが濃いだの薄いだの言っていたが、全然わかってなかった。
ネガの見た目上の濃い、薄いはネガベースの濃度によって左右される。
だから、単に見た目で判断してはいけない。
ネガベースの濃度を0とした時に、最大の濃度の部分がどれだけの濃さで記録されているかということが問題になる。

さらに。
ネガ濃度が完全にリニアではないと理解はしていたが、すごい勘違いをしていた。
まず、濃度と透過率の関係を勘違いしていた。
ネガの濃度は、0〜だいたい3.0くらいになるようである。
スキャナーにせよ、引伸機による印画紙への露光にせよ、ネガに光を当てて透過した光を受容する。
このネガの「濃度」は、実数ではなく対数であった。


詳しくは下記のページの「Ⅱ.写真濃度  1.写真濃度」の項を参照してもらうとして、
http://www.mb.ccnw.ne.jp/sfujii/satuei/satuei02.html 

濃度が0の時光の透過率は100%、濃度が1.0の時の光の透過率は10%、濃度が2.0の時の透過率は1%ととなる。濃度が2の時ですでに光の透過率は1%になってしまっているのである。
先ほど紹介したHPにも数式に"log"が登場しているように、これは対数なのである。
濃度とは「フィルムの透過率の常用対数」であるとのことだ。

この濃度というデータは、フィルムの「特性曲線」の縦軸として登場する。
例えば、下記は富士フィルムの Neopan AcrosのデータシートであるがこのPDFの後半に特性曲線が記載されていて、濃度が確認できると思う(13.特性曲線の項)。
ネオパン 100 ACROS(135) - 富士フイルム

はい、次。
フィルムへの光量の記録というのは、撮影(露光)時に行われる。
そして、現像によって濃度として確定した形になる。
そして、うえで書いたようにネガの濃度からスキャナーや引伸し機でデータを再現するのである。
では、もとの露光量がどのように値が上に記録されるか。
それが上述した特性曲線である。
縦軸が濃度、横軸が露光量であるが、この露光量の右隣に注目していただきたい。
”logH"と記載がある。やはりこれも対数である!!
そう、ネガへの露光量の記録は対数で記録され、ネガから読みだす時も対数で読み出すのである。

ここでルクス秒という単位が使用されている。
1ルクス秒とは、1ルクスの光を1秒間露光したことである。
これの常用対数が使用されており、1ルクス秒が0、10ルクス秒が1.0、0.1ルクス秒が-1.0となる。

カメラで設定するEVとの関係はとなりに置いといて、このグラフの横軸が対数であることが重要であり、上述のように-1.0は光量が1/10であり、つまり、-2.0は1/100、-3.0は1/1000の光量であることを表す。

光量がlogHの差が2.0の場合、光量は1/100の差があるということである。
これをEVで置き換えると、約7EV(7EVの光量差は1/128)と理解できる。
同じくlogHの差が3.0の場合、光量の差は1/1000であり、EVでは約10EVとなる。

さて、付いてきていただいているだろうか。
結局何が言いたいか・・・。
「露光量に対して、ネガに記録される濃度は常用対数なわけだから、概ね濃くなるに決まってるんだよ!!」ということである。

そして、現像に濃度が薄いということは本来記録できるレンジを狭めてしまっている。
特にシャドウ域はもともとカーブがゆるくなっているため、階調の再現性が乏しい。
故に下手にアンダー目の露出をしてしまい、現像で薄くネガ現像をしてしまった場合、もうシャドウの階調の再現はできない。

では、なぜ薄め(コントラストを低め)に現像しろというのか。
それは、印画紙の反応できる露光範囲の狭さに由来していると思われる。
今度はこちら、富士フィルムの富士ブロWPのデータである。こちらにも特性曲線が掲載されている。
一般引伸用黒白印画紙 フジブロWP - 富士フイルム
2号で露光したとしても、まともに階調を再現できる露光域は1.5程度である。(脚部と肩部はリニアになっていないので、階調再現性が悪い)。となると、透過光の差は1/100もない。

最初に書いたとおり、濃度が2.0で1/100なのでまともにこの階調差をもったネガを普通に露光しちゃうと白飛びか黒つぶれを免れないということである。なので薄くした方がベターであるのは理にかなっている。
濃いネガ、極端に薄いネガはフィルターワークを駆使して完成させていくという技が必要になる。

では、スキャニングの場合はどうなのか。
たとえば、僕が使っているGT-X970は最大で4.0の濃度レンジをスキャンできる。
印画紙とは違う。
スキャニングの場合、ネガをほぼそのままデータとしてからPhotoshop等で印画紙のように階調の反転(リニアに反転するのではなく、やはりlogで反転)してポジ像にする。
この時、画像は超眠いはずである。
しかし、そこはPhotoshop。眠い画像を硬くするのは全然問題ない。

つまり、スキャニングの場合、あえて薄く(コントラストを低く)する必要がない。
ちゃんと適切な濃度で現像しておいたほうがPhotoshopでの再現性も高くなるはずである。
(再現性が高いというのは、無駄なデジタルノイズやトーンジャンプなどが発生しないはずだよー、と言いたい。)
基本はメーカーのデータ※を元に、EI(撮影時に設定した感度)と現像後のフィルムの濃度が正しくなることが目標であるべきなのだ。
※とはいえ、ちょっと現像時間短めの方がよい。メーカーデータは散光式の引伸機を使用することを想定しているが、スキャナーは集光式に近い(と思われる)。SPURの現像液でもコンデンサー引伸機では15%現像時間を短くしろとの記載がある。

ISO感度の定義はまた別に詳しく記載されているページがあるので、そちらを参考に。
http://homepage2.nifty.com/ttoyoshima/Camera/FilmExposure.htm

だらだらと長文になったが、今後のフィルム撮影、現像方針は以下の通りで考えている。
・EIは基本フィルムのボックススピードとする。
・現像はメーカーデータでテスト。その上で必要に応じて10%〜20%程度の時間短縮の必要性を検討する。
・撹拌についてはメーカーデータから変更しない。

ただ、ボックススピード以外で撮影したい場合はどうするか。そこが悩ましい。
個人的にはISO200くらいの感度がベストだと考えているのだけれど、その感度のフィルムって以外と少ない。なので、100をPushするか400をPullするわけだけど、まずは基準感度でしっかり撮影、現像、スキャン、レタッチ、プリントのプロセスを完成させて、その上でチャレンジしていこうと思う。

まずは、基本をしっかり抑えること。これ大事。

今回はこれにて。
長かった・・・。